『蟲愛づる姫君』(法話)
2024/02/14
最近本を読んでいましたら、作者不詳の『蟲愛づる姫君』というお話のことを知りました。今から1000年前、平安時代のこと。京都に住むお姫様が「世間ではよく蝶を綺麗と言うけれど、あれははかないものでしょう。もっと本質を見なければ」と言いました。実はこのお姫様は蝶よりも毛虫の方に関心があり、「考え深そうな感じでいい」と言って観察されます。すると、毛虫が美しい蝶になることがわかり、この小さな虫にこそ生命の本質があると悟り、愛づる気持ちが芽生えていったそうです。
ところで、本日2月15日はお釈迦さまのご命日です。
仏教では死を苦しみと説きますが、お釈迦さまの死は死ぬとは言わず、「涅槃」と説きます。「涅槃」とは煩悩を全て滅した状態のことをいいます。つまりその状態こそ、苦の根源である煩悩を滅した境地であると言えます。
浄土宗では私たち凡夫の死を、阿弥陀さまの極楽浄土に救われていく「往生」と説きます。
一見死は恐いものと思われる方がほとんどだと思いますが、それこそが仏教の境地である「涅槃」であり、阿弥陀様のもとに救われていく瞬間なのです。
どうぞ皆様、先に記述したお姫様の毛虫に本質を見出したように、このお釈迦さまの命日を機に、改めていつか来る自身の命が終わる瞬間について、見つめ直していただけたらと思います。
そうすれば、自然とお念仏が声に出てくるのではないでしょうか?合掌🙏
華頂寺住職 千々和光俊 拝